禁煙成功したから小遣い減額?

いいね
いいね 好き すごい

長年吸い続けてきたタバコをすっぱりやめた。

これまで禁煙を考えたことがなかったのだが、ある日ふと「タバコ、やめてみようかな」と思い立ち、挑戦してみたらあっさり成功してしまったのだ。
世の中には何度も禁煙に挑戦して、ことごとく失敗している人が少なくないから、私のようなケースはかなりレアにちがいない。

一発で禁煙成功した私は、妻に「オレの意志の固さを思い知ったか」と自慢した。
すると妻は、「これからはタバコ代が必要なくなるわけね」と言う。
「そうだよ。俺の健康だけじゃなく、家計にとっても大きなプラスだろう」と答えると、妻は、意味ありげにニヤリと笑った。
「そうね。だからこれからはお小遣いを1万円減らすわね」
わが家は結婚以来ずっと小遣い制でやってきた。私はその小遣いでタバコを買ってきた。妻の言う「1万円」というのは、これまでの私の1か月のタバコ代に当たる。
「禁煙してタバコ代が要らなくなったんだから、その分、お小遣いを減らせるわけよね」というのが、妻の言い分である。

これは、明らかに理不尽だ。
小遣いをどう使うかは私の自由。
これまでは、その使い道の一つがタバコ代だっただけの事なのだから、禁煙したからと言って、その分減らすというのは、理屈に合わない。これまでタバコ代に充てていた1万円をこれからどう使おうが、それは私の勝手なはずだ。
私は当然、「そんなおかしな話があるか」と激しく抗議した。
勝気な妻も譲らない。
こんなことを言ったのだ。
「男は一度口にしたことを、かんたんに変えてはいけない」
「どういうことだ」と聞くと、「あなた、さっき、『禁煙したことは家計にもプラスだろう』って言ったじゃないの」と妻。
「たしかにそうは言ったけど・・・」
「禁煙してもこれまで通りのお小遣いだったら、家計にプラスにならないわよね。その分減額してこそ、家計にプラスになるわけじゃない」

私は言葉につまった。
くやしいが、妻の言う通りではないか。
「禁煙したから、小遣いを減らす」という妻の発想は明らかに理不尽だ。
しかし、自分で「禁煙が家計にプラスになる」と言ってしまった以上、小遣いを減らされても文句は言えない。

私は答えに窮し、考えた末、こう言った。
「よし、わかった。タバコを復活する。禁煙をやめて、タバコを吸い始める。だから、小遣いの額はこれまで通りにしてもらう」
妻は呆れた顔で、「バカじゃないの? せっかく禁煙したのに、お小遣いを減額されるのが嫌で、またタバコを吸うなんて。そんなことして、あなたにとってなんのメリットがあるの? 別にお小遣いが増えるわけではないし、せっかく成功した禁煙が水の泡になるし、健康にも悪いし。いいことなんて一つもないじゃない」
返す言葉がなかった。

そもそもは、妻の理不尽な言い分から始まったケンカだったのだが、いつの間にか、俺の方が理不尽なことを口にしてしまっていたのだ。
このケンカ、残念ながら完敗。
俺は納得いかないまま、妻の理不尽な「小遣い減額」に従うほかなかった。
[男、58歳、結婚29年]
*この記事は有志の方によるものです。

画像:PAKUTASO(pakutaso.com)

評価してください

13 ポイント
高評価 低評価

評価数: 3

高評価: 3

高評価率: 100.000000%

低評価: 0

低評価率: 0.000000%

いいね
いいね 好き すごい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメント送信前にreCAPTCHAをクリックしてください 日本語が含まれない投稿は無視されます。(スパム対策)