ある日の晩、妻と一緒にテレビを見ていました。
ニュースが流れていました。
妻「ひどいね、このニュース」
私「このニュース、何でこんな事起きたんだろう」
妻「あー、あんたが今話しかけたからアナウンサーが何ていったのか聞こえなかったじゃない」
私「今、アナウンサーは『この問題により中国との関係が大きく変わります』みたいなこと言っていたよ。」
妻「私は、ちゃんとアナウンサーから聞きたかったの。本当に肝心な時に無駄に話しかけてくるんだよねー。」
私「ごめんなさい。けど、発端はあなたが話しかけてきたから相槌打っただけなんだけど。」
妻「うるさいわねー。ほら、またニュースが聞こえない」
私は、なんか訳のわからないうちに、自分の存在を思いっきり否定されました。
またある日、私は大好きなドラマを見ていました。
ちなみにこのドラマ、妻にとっては面白くないらしいのですが、私はハマって見ているのを妻は知っています。
妻は、横でパソコンをいじっていましたが、突然話しかけてきました。
妻「このサイトに書いてあるレストラン、今度行ってみない?」
私「うん、そうだね。いいんじゃない。」
妻「あんたはこのメニューで何がいい?」
私「あの、今、ちょっといい場面でさ。あと5分待ってくれる?」
私は申し訳なさそうに妻に懇願しました。
ちょうど、ドラマではお父さんが、可愛がってきた娘さんに別れを告げなくてはならず、一つ一つ言葉を選んで娘さんに語り掛けている、涙無くしては見られないシーンでした。
私の目ももう涙で一杯です。
しかし、妻の言葉も止まりません。
妻「私はね、これが良いと思うの。」
私「うん、そうだね。けど、今本当に良いシーンなんだ。悪いけどちょっと待ってくれる?」
そう言った瞬間、テレビの画面が消えました。
なんと妻がテレビのスイッチを切ったのです。
慌てて妻からリモコンを取り上げテレビのスイッチを入れなおしたものの、もうそのシーンは終わってしまいました。
私「すごい感動的なシーンなのに。なんてひどい事するんだ!」
妻「私が聞いているのに全然話を聞こうとしないじゃない。」
私「だから、5分待って、って言ったじゃない。」
妻「私の話とこんな安っぽいドラマ、どっちが大切なのよ。どうせお父さんと娘は離れ離れになってお仕舞よ。そんなストーリー、すぐわかるじゃない。」
私「ストーリーだけじゃなくて、お父さんの言葉にすごく感動していたんだよ。ひとことひとこと、本当に良いセリフだったのに。」
妻「あー、うるさい。」
そこで会話は終わりました。
結局妻は自分本位の会話がしたかっただけで、そんなことは昔からわかっていたので、もう少し私も紳士的に話を聞くフリをすれば、感動的なシーンが見られたのに、と本当に悔やまれてなりません。
[男性 46歳 結婚後18年]
写真:Photo-ac(photo-ac.com)