この夫婦喧嘩は、夕飯のカレーが足りないことが原因だった。
私は結婚をしてすぐに主人の実家に同居することになった。4つ下の主人と義父を交えた暮らしに当初は緊張したが、主人の家族は皆良い人で、不慣れながらも家事をこなす私を快く迎え入れてくれた。義母はいない。主人と結婚が決まった年に急逝したのだ。義父は非常に良い人だが、昔仕事中に事故に遭い体が不自由なため、日中は介護ヘルパーが家事の手伝いに入っている。家の用事を片付けながら仕事に励む主人を支える日々を送っていた。
ある日のこと、義父の提案で夕飯にカレーを作ることになった。手伝いに来た介護ヘルパーの方と一緒に大鍋いっぱいのカレーを作り、白米を4合炊いた。主人は力仕事をしているためか、大食漢である。毎食白米を1合ぺろりとたいらげてしまう食べっぷりのため、量は多目に用意している。これだけ作れば安心だろうと私は考えていた。
その日の夜、主人は大皿に白米とカレーをたっぷり乗せて、夕飯を頬張った。3回おかわりをし、カレーは余ったが炊飯器は空っぽだ。普段より食べる量が多い。相当お腹が空いていたのだろう。私と義父は呆れながら、よく食べるなと感想を言い合いその様子を眺めていた。
夕飯の片付けが済み、主人と風呂に入っている時だった。湯船に浸かりながら主人は「風呂上がりにお菓子を食べても良い?」と聞いてきた。時刻は夜の11時。遅い時間の間食は、胃に悪いし太るため、私は今日は止めて明日食べようと提案した。すると主人は激怒。どうしても間食をしたいと言い、私の話を聞き入れない。私も間食をして欲しくないため、主人の要求を断固拒否。すると、主人は拗ねてしまい、私を浴室から追い出すとそのまま立てこもってしまった。さきほど大量のカレーを食べたのに、まだ食べるのか。呆れながらもどうしてそんなに食べたいのか、根気よく理由を聞き出すことにした。
主人は今日の昼、夜勤から帰って来た後、義父の病院に付き添っていた。診察が長引いたため、帰宅した時は午後6時。そのまま夕飯をたべることになった。仕事から帰りすぐに病院へ向かったので、昼を食べ損ねた。そのためお腹が空いてしまい、あのカレーの量では足りないと言うのだ。足りないも何も、2合近く米を胃に詰め込んでいたのに、どうして足りないのかが疑問である。質問をしても主人は「だってお腹が空いて練れないんだもん」の一点張りで、風呂場から出てこない。私は観念し、冷凍うどんと余ったカレーを利用して、カレーうどんを作成した。主人にカレーうどんがあるから出ておいでと声をかけ、実物を浴室の前まで持っていくと、ようやく彼は湯船から出てきたのである。
しかし、主人はのぼせてしまい、その場で足がもつれ倒れこんでしまった。カレーうどんよりも水分補給が最優先になり、結局うどんはたべられることはなく、作り損に。うどんは伸びてしまうし、作った労力も無駄になってしまった。
夫婦喧嘩は入浴しながらするものではないと、夫婦共々反省した体験談である。
[女性 29歳]*この投稿は有志の方によるものです。写真:PAKUTASO(https://www.pakutaso.com)
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