あり得ないと思った。引っ越しの準備に必死になっている最中だった。
1階の床がコンクリートになっている部分で、捨てる物を整理していたら、旦那が私の脇を通った。その時、旦那は長いホースを持っていた。
そのホースの穴から何と、『うんち』が降ってきたのである。
幸い、私の頭や体には付かなかったが、整理していたダンボール等にビチャビチャと降りかかった。
一瞬、何が起きたのかわからず呆然としたが、すぐに事態を把握して私は悲鳴を上げた。
「何これ~~~!」
「うんちじゃないの~~~!」
「何でこんな物が降ってくるのよ~~~!」
と私は続けざまに絶叫した。旦那は必死で言い訳していた。しかもヘラっと薄ら笑いを浮かべて
「ああ、ごめんね」
の一言だった。そりゃあ、わかってますよ、あなたがトイレの詰まりを直す為に裏まで行って、マンホールの蓋を開けて詰まったうんちと格闘してくれていたことは。
しかしね、その時に使ったホースを普通洗ってくるよね?
ホースの中にうんちが残ってないか確認してくるよね?
なぜそれをやらずにいきなりうちに入ってきたの?
あり得んだろ~~~?
私の頭の中はパニックと怒りで爆発しそうだった。
そもそも毎日のように離婚だ離婚だと大騒ぎしていて、その年に何回も市役所に離婚届をもらいに行ったぐらい、私達の夫婦関係は切迫したものがあったというのにこれかよ!!
私は再び叫んでいた。離婚だ、離婚だ、絶対離婚だ、何が何でも離婚だ、こんな理不尽な仕打ちあり得ない、嫌だ、嫌だ、嫌だ~~~と雄叫びをしながら怒り狂っていた。
うんちをちょっと踏んでしまって「うんが付くよ、ラッキーだよ」なんて呑気な会話をできるレベルではない量が降ってきたんだ。
これは当たり前の反応だと自分の中で思っていた。しかし不思議なもので、その後、わんこがそそう(うんち)をしたのだけどそれは何とも思わなかったのだ。
そう、私が気に食わなかったのは人間のうんちが降ってきたからだ。
しかも何回も離婚をしようとした旦那が不注意で落としてきたうんちなのだから、私の怒りは消えようはずがないのだ。
降ってきたうんちの片付けをしながら離婚届をまた取りに行かねばと思った。
しかし今日は日曜日、市役所はやってないぞ、警備員のいる所に行って特別に出してもらおう、何が何でも今日中に離婚届を書かないと私は気が済まない。
そう思って、私は必死で気持ちを切り替えたのだった。何せ引っ越しだけは既に決まっていたことだったから、今更ひっくり返すことはできなかったので。
とにかく今目の前のやることに専念しよう、そう必死に自分に言い聞かせていた時の記憶が生々しくよみがえる。
離婚する前に絶対復讐をしてやる、いつどこでうんちを振りかけてやろうか、私と同じ目に絶対遭わせてやる、そう決心した日だった。
女性46歳 結婚6年
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