私は結婚して45年目の69才の女性です。
夫と私は趣味も行動パターンも実に違っています。
夫は行動的でその行動の早さはびっくりするほどで、私が口にした瞬間、すべてが実現してしまう程の早さです。私はどちらかといえば、行動するより家にいたいタイプ。
金銭感覚も私は慎重ですが、夫は目の前にお金があれば使ってしまうというタイプ。
なくなったら明日考えようという途方もない金銭感覚の持ち主です。
出会った頃は、そうした風来坊の夫は私の憧れでした。私は自分にないものを夫に求めたようでした。年降るごとにお互いの性格は直るどころか、ますますに固まっていきましたから理不尽なケンカは年中でした。
例えば、何かを食べる食べ方でも理不尽な夫婦ケンカが起きることがあります。
好きなものをすぐ食べてしまうか、明日に向かって少しづつ食べるかで、結婚当初はケンカになったリします。夫はその日のうち食べてしまうタイプ。
私は明日に残しておくタイプ。サンドウイッチに一枚のハムをはさむか二枚のハムをはさむか今となれば、馬鹿げていると思うことでも、一緒になりたての頃はカルチャーショックで理不尽なケンカをしたりしました。
私「何で二枚はさむの?」
夫「食べたかったから」
私「一枚でいいじゃない。明日なくなる…」
夫「明日なくてもいい。今食べたい。」
私「………。」
私は何となくしつけられていない動物を見るような目をしたらしいのです。そこから夫は不快そうな顔になり「どう食べたっていいだろう?」とけんか腰になり「勝手にしたらいい!」と私。ケンカはこじれていきました。でも、原因は些細なカルチャーの違いでした。
また、こうしたこともありました。突然ある日、義父が上京して私の実家に寄るということがありました。それが突然で今からというので、私は予定を狂わされるしで夫に文句を言いました。
夫もそれが理不尽だとは分かっていましたが、頻繁に来るわけではないから何とか義父の顔を立ててくれるよう私に頼みましたが、「でも、今からなんてとても考えられない。」と私は義父の行動を責めました。義父もお酒に強く風のように生きている人で、お茶なんて全く出されても飲まないのでお酒を飲まない私の家系では、お茶に和菓子の一般的応対に何の反応を示さない義父の態度に困惑していました。
私「だって、こんなにいきなりでは困るわよ。」
夫「仕方ないだろ! 言ったって言うことを聞く親父じゃないんだから…。」
私「こんなことに巻き込まれたくない! ほんとに落ち着かない親子なんだから!」
いらだった私は、ここまで言わなくてもいいことを言ってしまいました。最後に完全に切れてしまった夫は、急須を投げてそれが割れました。私達は突然現れた義父の行動のために、理不尽にケンカをしていたのです。
最後は仕方なく実家に出かけましたが、夫が出迎えに行って私の実家に先に着いていた義父は、遅く到着した私に対してご機嫌斜めでした。仕方なく、私の両親は義父を車で案内して有名な料理店で珍しい取り料理とお酒を振る舞うと、ようやく義父のご機嫌は直りましたが、おかげで私達夫婦は、しなくてもいい理不尽な夫婦ゲンカをしたのでした。風のよな性格というか夫も義父も計画性がないので、予定魔の私にはついていけないところが多々あります。あの日も帰りは電車で、義父たちと一緒に帰ったのですが、夫と義父にはさまれた前後、電車が揺れていると思ったら、何と2人とも同じように貧乏ゆすりをしていたのです。実に、同じ遺伝子を感じたものでした。
[女性、69歳、結婚45年目]
*この記事は有志の方によるものです。
写真:PAKUTASO(pakutaso.com)