その朝、妻はいつもより30分寝坊した。
朝は、食事の支度に、洗濯、子どもの保育園送り出しに自分の身支度とやることがてんこ盛りだ。
とりあえず、まずは朝食の準備だ。時間もないので手軽なパンにしようとしたところ、こんな日に限って、子どもは朝食に普段は見向きもしない納豆を食べたいと言いだした。
いつも朝は食べないのに。
それでもなんとか納豆に味噌汁と目玉焼きを用意した。
夫と子どもには先に朝食をすませるよう伝え、妻は洗濯機を回すことにした。
無事に洗濯機を回し、よし自分も朝食にしようとリビングに戻った瞬間、目を疑う光景が。
なんと子どもが納豆まみれの手で、テーブルやスプーンをつかんで遊んでいるではないか。「ねばねば~」と笑いながら。
そのねばねばの手が食卓の椅子にかけておいた私のカーディガンに差し掛かかり、私が叫ぶ間もなくカーディガンは納豆の糸の餌食になった。
子どもを叱りながら「ちょっと見ててよ!」と夫に言うも、夫はスマホに夢中だ。
子どもが納豆で遊びがちなのはいつものことだが、怒りはそれを見ていない夫に向けられた。
しかし、怒りをなんとかとどめて納豆の始末に集中することにした。
結局のところ、納豆にはほとんど手をつけなかった子どもに、仕方がないのでバナナを与えたところ3口食べて「もういらない」と放り投げた。
怒りのボルテージがズンズン上がってくるのを感じたがここでも必死にこらえ小分けにして、子どもの口に運ぶ。
夫が食事を終え、食器をキッチンに運んている間に、今度は子どもがふざけて夫の椅子で遊びはじめた。
我が家の椅子はくるくると回転するタイプなのだが、夫の椅子の背もたれには、夫のスウェットやパーカーが重ねてかけられていた。
背もたれに重心がかかってバランスの悪くなった椅子は、子どものおふざけによりあっけなく横転した。
椅子が転がる姿がスローモーションのように妻の目に移った。
瞬間、妻の怒りが沸点に到達した。
怒りの矛先は夫と夫のスウェットやパーカーに向けられた。
妻の逆上により、宙を舞うスウェットやパーカー。
夫は半ば茫然としながらも、我に返って怒られる筋合いはないと反撃。無駄な夫婦喧嘩に月曜の貴重な朝の時間が費やされた。
子どもが朝食を食べたり食べなかったりするのはいつものこと。
イライラすることにはまったく意味がなく、いつもだったら色々な方法で食事をとらせるのだがこの日の余裕のない根本的な原因は妻の寝坊である。
椅子の背もたれに洋服をかけるのは、結婚以来、妻が重ねて夫に注意していたことであるが、いまさら激怒することでもないしこの日は妻も自分の椅子にカーディガンをかけていた。
夫からすれば、かなり理不尽な妻のキレ方だったに違いない。
[女性、36歳、結婚6年]
*この記事は有志の方によるものです。
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