「急なお客様は今後NG」

結婚してまだ３ヶ月くらいのことだ。
妻は新婚旅行のためパスポートの手続きをしに外出していた。
当時はペーパードライバーで、自転車で片道５０分ほどかけて役所に行った。
無事に手続きを終えて自転車で帰ろうとしたときに夫から電話があった。

夫『もしもし、今大丈夫？』
妻『大丈夫だよ。今パスポートの手続き終わったところ。どうしたの？』
夫『今、会社の同期と久しぶりに会って。少し時間潰してから家に連れていってもいいかな。５時くらいになると思う』
妻『え…』

一瞬戸惑った。
今はちょうど３時。
５時か…自転車をとばして…掃除とメイク直しできる時間は１時間くらいか。
タイトだが、新婚だったので夫の望みならと了承した。

電話を切ってから、自転車をこぎまくった。
その時は９月で残暑がかなり厳しく、全身汗だくだった。
パスポートの手続きのため、朝からの外出なので満足に掃除もできていない。
家に帰ったら押し入れにつっこんでごまかそう、など考えながらとにかくこぎまくった。

家の駐輪場に着いた。
時間は３時４０分。かなりがんばった。
しかし、ふと目をやるとなぜか夫の車が駐車場にあった。
青ざめた。
帰ってくるのは５時のはず。
携帯電話を確認するとメールが入っていた。

『やっぱり時間潰せそうにないから、今から家に向います』
妻がそっと玄関ドアをあけると、クーラーの効いた散らかり放題の家で夫と同期が待っていた。
頭が真っ白になったが、汗だくのメイクボロボロの顔でとりあえず挨拶した。

同期から６時からお店でご飯を食べに行くので一緒にどうですかと誘われた。
『いいですね。とりあえず着替えと化粧直しさせてください』とひきつった顔で笑った。

６時までうちで時間を潰すがやることが何もない。
毒舌キャラらしい同期は『暇だし、掃除でもしますか』と笑えない冗談を言っていた。

食事会の帰り、夫は楽しかったねと上機嫌だった。
駅まで同期を送った後、帰り道で妻は怒り狂った。

妻『５時の約束だったから了承したのになんで勝手なことをしたんだ』
夫『…！なんで怒っているの？ちゃんとメールしたじゃん』
妻『私は返信していない。了承もしていない。部屋もめちゃくちゃでメイクもぐちゃぐちゃで恥ずかしかった』
夫『大丈夫だよ。そんなこと誰も気にしてないよ（にっこり）』
妻『私が気にしてるんだよ！！！』

夫は何が悪かったか本質がわかっていないようだ。
妻はどうしても夫が許せず、夫を家に入れなかった。
夫は玄関ドアの外から入れてよ～と騒いでいた。

やっぱり、お客様には綺麗な部屋で、着飾って出迎えたい。
女のプライドを夫は理解できないようだ。
単に連絡の行き違いの問題ではない。

これを機に我が家に新しいルールができた。
『急なお客様は今後NG』

[女性、33歳、結婚7年目]*この記事は有志の方によるものです。
写真:
PAKUTASO(http://pakutaso.com)